土地所有権の放棄制度とは?負動産の相続
田舎や過疎化した地方都市、山奥や海辺の別荘地など利用目的が絞られており、価値が低い、もしくは活用方法に困るような土地を「負動産」といいます。
負動産は自身で購入するほかに、親から相続として受け取ることで取得する場合も多いと言われています。
自身で購入した場合、取得当初は高頻度で利用されていた方でも、途中で負動産であることが発覚したり、ライフスタイルの変化があったりと、所有権放棄を検討される場合も少なくはないでしょう。
今回は、土地所有権の放棄制度や負動産の相続時における問題点、また所有権放棄に関する国の取り組みなどについてご紹介します。
土地の所有権放棄制度とは?
土地の所有権放棄制度とは、現在自身が保有している土地を第三者や業者、国に所有権を渡すことで、自身が所有しないように法的な処理を行うことを指します。
所有権を放棄することで、これまで支払っていた固定資産税が無くなったり、負動産の管理の手間をなくすことができたり、修繕費を支払う必要がなくなったりします。
そのため、金銭面はもちろん、負動産地へ向かう回数や体力、また「管理しなければ…」といった精神的なストレスを軽減することができます。
このように、負動産を所有するとデメリットも多いため、「負動産かも…」と思われましたら、できるだけ早めに業者に相談するなど対策を行う必要があります。
相続による土地などの財産放棄の注意点
負動産は法的に正しい手段をとることで放棄することができます。
しかし、簡単に放棄することはできず、また放棄する際はいくつか注意しなければならない点があります。
こちらでは、相続による土地放棄の注意点をご紹介いたします。
相続の順番
負動産を含む土地や財産の相続には、順位が定められています。
順番は被相続人の配偶者と子ども→親や祖父母→兄弟姉妹となります。
そのため、たとえば皆様が「被相続人の子ども」だった場合、優先的に相続の引き継ぎ、もしくは放棄を決定することができます。
しかし、被相続の親や祖父母、兄弟姉妹が相続を放棄するか否かを決定するまでは相続の権利は与えられません。
そのため、負動産を相続しないで済んだ、と安心していると後々親族間のトラブルに発展する場合があります。
また、相続をするか否かは、相続の権利があると分かってから、3ヶ月以内に決定をしなければならないという、期限があることを忘れてはなりません。
すべての土地を受け継ぐ?受け継がない?
相続の際には、財産のすべてを相続する/放棄するかの二択になります。
つまり、「これは相続する」「これは放棄する」などといった選択を行うことができません。
先述の通り、相続の権利があると分かってから3ヶ月以内に、どちらの方が良いかを慎重に検討しなければなりません。
なお、相続の決定/放棄は一度申請するとやり直しができません。
管理責任
対象の相続人全員が負動産の相続を放棄すればすべてが終了する、というわけではありません。
民法の第940条には「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない」という記述があります。
※出典:e-Govポータル(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089)
つまり、固定資産税を支払う必要はなくなった場合でも、負動産の近隣に被害が生じた際には賠償責任が発生したり、刑事罰に問われたりする可能性がある、ということを指します。
この問題の解消方法として、新たな管理者に引き継ぐという方法があります。
家庭裁判所に向けて利害関係者や検察官が新たに管理者を請求することで選任されます。
上記をもって、はじめて不動産の管理責任から解放されます。
相続土地国庫帰属法
相続の際に損得の天秤にかけた場合、不動産を所有しても得の方が大きいため財産を相続したという方もいらっしゃるかと思います。
しかし、それでも固定資産税などのランニングコストがかかる負動産はいずれ手放したいとお考えではないでしょうか?
そのような負動産を相続者が手放し、国に所有権・管理を譲渡する法律「相続土地国庫帰属法」が施行予定となっております。
2021年現在も調整中で、施行日は2023年頃の予定です。
この法律は将来的に土地が所有者不明化、管理不全化による土地の価値低下の防止、及び負動産所有者の負担軽減を目的としたものとなっております。
なぜ新制度ができたのか
相続土地国庫帰属法ができた背景のひとつに、不動産所有者の負担軽減が挙げられます。
というのも、相続はしたものの望まない土地まで所有してしまい、十分に管理が行われないというケースが多くみられるためです。
使わない土地に金銭の投入やメンテナンスのための訪問などを行いたくないと思われる方がほとんどです。
所有権を国に帰属する法律の設立を望む声が多かったため、この法律が作られました。
どのような場合に利用できるのか
とはいえ、誰でも相続土地国庫帰属法を利用することはできません。利用するには、「ヒト」「モノ」「カネ」の観点から条件をクリアにする必要があります。ここでは、それぞれの観点について詳しくご説明します。
ヒト
この法律は相続を受けた方が対象になります。
つまり、土地の所有権をもっていない方は申請ができない、ということです。
なお、共有地の場合は共有者全員で申請を行う必要があります。
モノ
たとえば、崖がある土地や土壌汚染がある土地などを正しく手入れするには、大きなコストがかかったり危険が伴ったりしない土地である必要があります。
上記の場合、のちの利用者の安全が確保できないので、所有権を移せない可能性があります。
カネ
相続土地国庫帰属法の利用にあたり、審査手数料のほか10年分の管理費を負担金として国に支払う必要があります。
費用の目安として、山林や原野では約20万円、市街地で約80万円が一般的であるといわれております。
管理会社が道路や共有施設を管理し維持管理費用が高額な別荘地、管理分譲地は、残念ながら該当しません。
申請方法
申請方法として、まずは手数料を支払い、申し立てを行います。
申し立て後、法務局にて相続土地国庫帰属法の利用が可能かどうかの審査を行います。
審査基準を満たした場合は承認処分を行い、併せて負担金を支払うことで負動産の権利が国へ帰属されます。
審査については、実地調査が行われることもあります。
その場合、他の関連部署にも協力要請がなされ、より詳しく調査されることが想定されます。
おわりに
今回は、土地所有権の放棄制度や負動産の相続時における問題点、また所有権放棄に関する国の取り組みなどについてご紹介いたしました。
土地の所有権放棄制度とは、現在自身が保有している土地を第三者や業者、国に所有権を渡すことで、自身が所有しないように法的な処理を行うことを指しています。
所有権放棄がされる土地の傾向として、生産性や利用価値が低い、いわゆる「負動産」が多い傾向にあります。
財産の相続には順位や管理責任などの問題があり、どうしても負動産を引き継がなければならない場合があるのです。
そのような方の救済、もしくは国による土地の有効活用のほか、所有者不明の土地をなくすために「相続土地国庫帰属法」が作られました。
こちらの審査基準は「ヒト」「モノ」「カネ」となっており、誰でも無条件で利用できる、というわけではありません。
負動産を所有している方は、一度ご自身でも確認されてみてはいかがでしょうか。相続土地国庫帰属法の施工日は2023年ごろの予定です。
それでも事情があり、「それまで待てない」という方や「すぐに別荘地や別荘を処分したい」と思われる方は、専門の処分業者にご相談されることをお薦めします。
この記事を書いた人
リゾート・バンク コラム部
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